有機農業は、ただ単に化学肥料や農薬を使用しない農法ではありません。
狭い意味では、農法の一つであるといえますが、近代化によって人類が招いた地球環境危機や生物多様性の危機を軽減させ、将来世代のために、持続可能な社会を取り戻すために重要な役割を果たすことができる「これからの農業」です。
2021年、日本政府は2050年までに有機農業の栽培面積を100万haにするという目標を定めました。
有機農業では、有機物を活用し、微生物やミミズなどの土壌動物が多く棲む、健全な土づくりが基本となります。微生物などさまざまな生き物が、有機物をを分解し、窒素、リン酸、カリウムをはじめミネラル類など、植物に養分を供給します。
近代農業では、化学合成で作られた水に溶けやすい化学肥料を直接土に与えます。例えていえば、私たち人間が肉や野菜を食べて酵素や腸内細菌の力で消化して栄養を吸収するのが有機農業。栄養剤やサプリメントが化学肥料にあたるともいえるでしょう。
農業は近代化において「自然を支配する農業」へと変化していきました。しかし、化学肥料や農業などの資材を大量に使用する農業は、一時的には生産性を上げ、労力も軽減する一方、地球環境や人の健康に深刻な影響を及ぼしてきました。
近年、虫や雑草もすべて邪魔ではなく、多様な生き物が生きる環境が病害虫に強い健康な作物を育てる事実にも関心が寄せられています。